EPISODE ofフルギ


ミキリハッシンは、“価値のないモノに価値を込める”という理念を掲げ、
服としての役目を終えた”フルギ”を取り扱うところから
コンセプトショップとしての歴史がスタートしました。


当時、名も無いブランドや、自分たちが面白いと感じる
特殊な形状の”フルギ”をセレクトし、
そのモノの意味と、自分達の”想い”を込めて、
当時のユーザーと共に、コーディネートでその価値を示し、表現していました。

(左)No.26 / (中)No.23 / (右)No.28 / TUNE出版社:ストリート編集室



自分達の”想い”とは、
『ファッションは、自由であること』


他人にとっては、ゴミのような服やモノ(=フルギ)でも、
自分達が美しいと思えたら、ファッションとして纏うことが出来る。
その行為が、トレンドや著名人のコピーでは無く、
本来の自分の価値を示す、表現として発展する未知の可能性がある。


その一歩をミキリハッシンすることが大切な行為と信じて、
15年間その歩みを続けてきました。


移り変わりや歩みの早いファッションの世界で、
一つの物事を同じ理念で長く続けることは、簡単ではありません。


社会の変化や、自身やユーザーの状況ないし、環境の変化で、
自分達自身が望む、自由の定義が移り変わったり。


当時、価値がなかったモノに、価値が備わってきたり。
一方で、モノに備わっていた価値が、失われてくることもあります。

正直に綴ると、僕自身、フルギに対しての興味が
特にこの数年間、失われていたのですが、
(この部分はとても個人的な事象です。割愛します。)


今回、ある”気付き”がきっかけで、
ある場所に訪れたくなり。数年ぶりに本腰を入れて、
フルギを買い付けに、アメリカに行って来ました。



ミキリハッシンのフルギは、14年前から変わらず
アメリカの”スリフトストア”を中心に買い付けています。
“スリフト=thrift”とは”節約,倹約”の意味を持ち
“寄付=ドネーション”をベースに、
あらゆるものを無料で受け入れ、低価格で販売している、
非営利のリサイクルショップを指し、
慈善事業としても広く認知されています。


この”スリフトストア”は、街の至るところに大なり、小なり、存在し、
その圧倒的なスケールと、ジャンルを問わず膨大に寄せ集められた品揃えは、
子どもから老人、アジア系からアフリカ系、富裕層からホームレスまで、
あらゆる人々が様々な目的で訪れ、利用しています。

(左)スリフトストア OUT OF THE CLOSET
    (右)スリフトストア THE COUNCIL SHOP Thrift Store&Donation Center



僕には、この”スリフトストア”が、
大量生産/大量消費を背景に資本主義大国となり、
一方で治安や移民、貧富などの多大な問題を抱える
アメリカを象徴しているように思えていて。


この美意識など皆無な、ただの圧倒的な現実の中で、
美しい服を探す行為そのものが、なんだか一筋の光を探しているような心持ちになり。
効率的に集めてくれるディーラーにお願いする方法では無く、
スリフトストアでの買い付けに、こだわりを持っています。



今回、なぜこのタイミングで本腰を入れて、“フルギ”を買い付けたくなったのか。


その理由は、自分なりの”豊かな生き方”への興味と、
自分の中での、ビートニクの再燃です。


ビートニクとは、アメリカ文学界から広がった、一種の思想運動を指し、
当時加速していた文明や、抑圧的かつ禁欲的な社会に対するカウンターカルチャーとして
社会現象へと発展し、その思想は後のヒッピーへと継承されていきます。

Beatniks in the summer of 1969



文明を重んじた西洋哲学よりも、共生を志した東洋哲学を支持し、
色濃く残っていた差別を否定し、多様な生き方を肯定する、
オルタナティブな社会の実現を目指したこのカルチャーが、


地球の限界(プラネタリーバウンダリー)が叫ばれ、
サスティナブルを含んだ世界課題に対する共通の開発目標(SDGs)や
多様なセクシャリティ(LGBTQ(+)に対する
スタンスが問われる現代社会と、なんだか重なるように思い。


もう一度、このカルチャーを自分なりに解釈し、
自分たちのプライベートな提案の場である、
ミキリハッシンで表現してみたい欲求に駆られ、このカルチャーが誕生した”聖地”に足を運びたくなり、渡米しました。


この”聖地”とは、ミキリハッシンの”シモキタ期”を知っている
顧客ユーザー(ブラックメンバー)にはお馴染みの、僕とアキラの原点とも言えるショップに由来します。


アメリカのサンフランシスコに位置する、
ヘイト・ストリートとアシュバリー・ストリートの交差点である、
“HAIGHT&ASHBURY”です。

Haight-Ashbury / San Francisco, CA 94117 USA


当時のHAIGHT&ASHBURY地区は、英国調で安価な貸しアパートが立ち並び、
多くのミュージシャンやアーティスト、作家が共同生活を営みながら、
様々な音楽、作品、アートを生み出し、
フリーライブやパーティに興じる、熱気が渦巻いたエリアでした。

Haight-Ashbury / San Francisco, CA


穏やかな天候と、美しい大地、安価な物価に恵まれたこのエリアで、
文学、アート、音楽、ファッションが時に激しく、時に穏やかにぶつかり合い、やがて世界の注目を集める一大ムーブメントへと発展していったのですが、そんなエリアに集まったビートニクスのバイブルとなった1冊の名著があります。


“ジャック・ケルアック”の「路上(オン・ザ・ロード)」です。

Jack Kerouac(ジャック・ケルアック)
ON THE ROAD / 1957年 出版元: Viking Press


不自由の無い、与えられた人生を捨て去り、
目的の無い、終わりなき放浪の旅に出ることを描いたこの小説は、
戦後裕福なアメリカで、不自由無く暮らしていたはずの若者の
言いようの無かった不満を突き動かし、熱狂的な支持を集めました。
一方で、そんな若者達を当時のアメリカ社会は、“ドロップ・アウト”と言い例え、“落ちこぼれ”のレッテルを貼ったことは想像に難しくありません。


「路上(オン・ザ・ロード)」の中で、
ビートニクスの教祖的存在であった”アレン・ギンズバーグ”は、こう語っています。

Irwin Allen Ginsberg(アレン・ギンズバーグ)

「ビート=beatとは、beatitude(至福)からきている言葉であり、それは喜びの表現である」

ビートニクスの”落ちこぼれの芸術”は、彼らにとっての”喜びの表現”であり、
その表現が後に彼らを”堕ちた=ドロップ”と形容した、アメリカ社会を席巻する。
これほど自由で、痛快な、インディペンデントなカルチャーが数十年前に存在していた事実に
改めて胸が熱くなると同時に、
もう一度自分にとっての”喜び=豊かさ”と、クリエイティブに向き合いたいと思い、
10日間の時間を取り、アメリカに向かいました。




買い付けたアイテムを、一部ご紹介させてください。

Tie-Dyeing(絞り染め)の労働着”Carheart”。
手間を有する多色染めにラブとピースを感じました。

Carheart / ¥24,800



Hand-paintされたMA-1複製品。
オリジナルであれば意味が異なるので僕は買い付けません。

MA-1 / ¥18,800


東洋思想を感じる、羽織のデニムジャケット。
欧米で生まれた羽織に、異文化からのリスペクトを感じています。

Denim Jacket / ¥12,800


僕が密かに推している90’sブランド“jamie sadock”
ユニークに作り込まれたディテールと独特のカラーリングが
自由と色気を醸しています。

jamie sadock / ¥17,800


アースカラーのCOOGI。
巷で人気の派手な印象とは異なり、色差やコントラストを排した、
自然な主張が気に入っています。

COOGI / ¥18,800



一部のセレブリティや、スターデザイナー、インフルエンサー、メディアによって
ゲームのように消費が促されるトレンドの”ストリート・ファッション”には、見切りをつけたいと思っていて。


僕らにとってのストリートとは“ストリート的カルチャー”では無く、”日々の生活”だと考えています。


今の”ストリート=日々の生活”とは、
インスタントなものにも、贅沢なものにも興味を抱き、
オフラインにも、オンラインにも魅力を感じる、
とても曖昧で複雑な日常で。


何に価値を見出して良いのか、分かりづらい日常だからこそ、
多くの人に褒められる、“分かりやすいモノ”を選びがちになってしまいます。

そんな日常の中で、”みんなの正解”では無く、“自身の正解”を探すために。

もう一度、自分で選ぶこと=インディペンデントであることと向き合う為に。
ビートニクに想いを馳せた、”フルギ”を提案してみたいと思いました。

最後に、ビートニクの思想はアメリカだけでは無く、
日本にも存在しており、各地で一大ムーブメントへと発展しています。
“部族” ”コミューン” ”フェス” ”まつり”と、その表現には
狂気のような美意識が渦巻いていますので、
またどこかでご紹介させてください。

部族 / 1967年 イラスト:ポン(山田塊也)


追伸
ビートニクの思想の中には、レディメイドに対する反抗の意思も含まれていて。
当時のビートニクスは様々な想いを込めて既製品をRE-MADEしていました。
この当時のRE-MADEの思想でカスタムした”フルギ”も後に店頭で提案したいと思いますので、
楽しんで頂けたら嬉しいです。


ハウス@ミキリハッシン 
ディレクター
山口壮大

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