EPISODE ofめばえ

FUTATSUKUKURI
十周年記念展示受注会「めばえ」


FUTATSUKUKURIは2009年に大阪を拠点に設立された、服飾ブランドです。
「記憶や憧れにデザインを加えて新しい価値を生み出すこと」をコンセプトに、
デザイナーの香衣氏の幼少期の憧れや思い出を、独自の視点でファッションとして表現しています。

“アンチハイファッション志向と感情をデザインへ”


デザイナーの香衣氏はブランド設立当初から自分にしか出来ないことを求め、
トレンドに沿わせるような物づくりはせずに、自分の歴史を掘り起こしていく感覚で、
彼女自身の記憶を、服づくりに宿すような表現を続けてきました。


記憶とは人によって捉え方も様々で、とても曖昧な存在です。
分かりやすく過去の事例と紐付け、具現化してしまうと、
“古さ”に繋がってしまうリスクが伴い、表現すること自体が不可能のように思えますが、
FUTATSUKUKURIのデザインは、新しさの中に、懐かしさが共存する、
独特のバランスを維持しています。


それは、FUTATSUKUKURI が提案する特有の女性像にも関係し、
可憐なあどけなさの中に、女性らしいエレガンスや、意志の強さを含む
女性の“尊さ”そのものを表現しているように思います。

“めばえ”

そんなFUTATSUKUKURIの活動10周年を記念し、
ハウス@ミキリハッシンでは新作コレクションの発表と、
貴重なアーカイブコレクションを集った記念企画「めばえ」を開催しました。


以下はFUTATSUKUKURIデザイナーとして、そして一人の女性として、
10年の月日を過ごしたデザイナーの香衣氏が本展に寄せた寄稿です。

「十年前、右も左もわからないままブランドを立ち上げました。
六畳一間の部屋を借りて
「B級ファッションを真面目に追求している昭和の忘れ形見的ファッションブランド」とコンセプトを掲げてすぐに変更、
「記憶や憧れにデザインを加えて新しい価値を生み出すこと」をコンセプトにコレクションを発表してきました。

当時はアンチハイファッション志向、自分にしか出来ないことを求め、自分の歴史を辿るに至って記憶と妄想のふわふわしたデザインをしていたように思います。
気取ることが恥ずかしく、とにかく身の丈にあった物や事に拘りました。
朝から晩までアトリエに篭り、とても地味だけど ミシンがあればそれでいい 的な日々を過ごしていました。

そうこうするうちに結婚が決まり、子供を産んで全く新しい生活がスタート。
私は日々の、悔しくてやりきれない気持ちを糧に作業に勤しんでいたので心のどこかで
「結婚、子供、幸せ」が来ることを恐れていたのです。

このとき初めて、記憶のベールから外れ「今の自分」に目覚めて エッセイのような服作りが始まりました。
暮らしをヒントに、、なんていう生ぬるいものではありません。
結婚しても子供を産んでもやっぱり沸々と湧き上がってくる何かがあるのです。

なんだろう、この沸々は。

私はこれをブルースと呼んでいます。
ブルースがある限り私は服を作っていられる気がしています。

今回初めて記念冊子を作りました。
出来上がったものを見たとき、
それまでずぅっと忘れていた当初のコンセプトを思い出したのです。
自分の中に持っているものってそう簡単には変わらない、ということに気付いて なぜだか妙に腑に落ちたのでした。

そんな私の右往左往な十年間に関わっていただいた皆様に感謝します。

FUTATSUKUKURI 香衣」


ハイファッションに対してアンチの姿勢を取り、ブランドをスタートした香衣氏が、
10年という日々の積み重ねの中で「結婚、子供、幸せ」を経て、
新たに始めた、“エッセイのような服作り”は、
いわゆる暮らしをヒントにした、生ぬるい服作りではありません。

幸せを経てもなお、彼女の中に沸々と湧き上がる”ブルース”は、
今も脈々とFUTATSUKUKURIの中に息づいています。

本展の記念に製作された冊子では、
デザイナーの香衣氏の“昔”と“今”に関係の深い場所を舞台に、
FUTATSUKUKURIと関わりのある方々をモデルに、
10年の月日の中で製作されたコレクションが、
年代に捉われず、様々にコーディネートされています。

長い年月をただ繰り返すのでは無く、日々自答し、変化しつつ積み重ねた
一切の妥協を許さないFUTATSUKUKURIの服づくりと、
変わらないファッションへの強い想いを、
10年間のコレクションを通じて、
感じていただく機会になれば幸いです。

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